出っ歯・開口矯正治療日記・体験談

出っ歯・開口矯正治療日記―16歳 女性

うちの娘は顔がおおきくて、ポカンと口を開けている。

ある日私のクリニックに1本の電話が入りました。それは、高校1年生の娘を持つ母親からでした。
母親によると、「うちの娘は、顔が大きくて、そのうえ、いつも口がポカンと開いているのです。その上だらしないので、学校でもいじめられているようです。一度でいいから先生のところで診ていただけませんでしょうか」というものでした。
私は漠然とそのときイメージしたことがありました。高校生の女の子は太りやすいので、顔の肉がたるんでいるのだろうと思ったのです。翌日母親に連れられて一人の女子高生A子ちゃんがやって来ました。

意外!やせていて背が高く、清楚なA子ちゃん

私は、正直、驚きました。
というのは、私は、前日のお母さんの電話から、太っている女子高生をイメージしていたからです。A子ちゃんは、太っているどころか、むしろやせていたのです。診察台にすわって、上半身をおこしているA子ちゃんをみただけでは、お母さんのいう「顔が大きくて、口がポカンと開いている」という意味が、私には、よく分かりませんでした。
私は、診察台の上半身をリクライニングさせました。そして髪が床に向かって垂れて、顔全体の輪郭がはっきりとうきでた、A子ちゃんを見ました。えっ違う……。

やせているのに、なぜか二重あご

そこにはさきほどまでの、やせていて、小顔で、綺麗な黒髪の少女はいませんでした。まったく違う顔をした別のA子ちゃんが出現したのです。
A子ちゃんはやせていて、小顔であるにもかかわらず、二重あごだったのです!
お母さんが、顔が大きいとしきりに言っていたのは、太っているためにあごの肉がたるんでいるのではなかったのです。

秘密は下あごにあり!

太っていなくても、二重あごになるのには原因があります。「下あごが、からだのうしろにスライドして、ずれてしまう」ときです。私はA子ちゃんとしばらく話を続けるうちに、2つのことを突き止めました。

A子ちゃんの下あごがずれた2つの原因とは?

第1は、「口呼吸ばかりして、鼻でまったく呼吸をしていない」ことです。
口呼吸ばかりしている人は、長い文章を話すことが出来ません。笑うと、すぐに咳き込む癖があるのも、口呼吸の人の典型的な癖です。
第2に、「あごの発達が悪く、あごが小さい」のです。顔が小さいこととあごが小さいことは、全く次元の異なることです。あごが小さいと、下のあごが後ろの方に、スライドしてずれる場合が多いのです。
また、口呼吸ばかりしていることも、下あごがからだの後ろのほうにスライドしていくことを助長します。

謎がとけた!

A子ちゃんの場合、
1.あごの発達が悪くて小さい。
2.口呼吸が主体で鼻呼吸をしない。
という2点において、下のあごが後ろにずれやすいのです。
A子ちゃんは、二重あごになって顔が大きいかのような錯覚を作りだしていただけでした。さらに、もうひとつの口呼吸の人の特徴もみられました。
それは、話した後に、口がポカンと開いてしまうことです。A子ちゃんは、口呼吸なので、話した後にポカンと口があいてしまうのです。私が気付いたことは、もう一つありました。

清楚なA子ちゃんが、だらしなく見える理由

A子ちゃんと、世間話をしているあいだ中、私はA子ちゃんの顔の表情筋から一時も目を離しませんでした。A子ちゃんの表情筋(喜び、悲しみ、怒り、嬉しさを表現するための顔の表面にある筋肉の数々を指す)は、口呼吸をメインにする人の例に漏れず、話したあとに口が開いてしまうので、次第に緩んでいたのです。
鼻呼吸しかしない人は、口が必ずキリリとしまっているので、表情もひきしまって、凛々しく見えます。一方、口呼吸をよくする人は、話した後に口をポカンと開けてしまうので、表情筋がたるんで、間の抜けた印象を他人に与えることが多いのです。

下あごの未発達

A子ちゃんはあごは小さく、体も細身です。顔が大きいというより、むしろ小顔であごの発達が悪いのです。私は、A子ちゃんのあごで起きていることがA子ちゃんを不幸にしており、これを直してあげれば、A子ちゃんはいわれのない偏見から自由になり、幸せになることが出来ると確信しました。私は、お母さんとA子ちゃんと3人で、A子ちゃんに関する説明をなるべく時間をかけてしました。
お母さんは、意外にも、すぐに事実を受け止めてくれました。

A子ちゃんの治療の3つの段階

まず、治療自体は、歯科矯正を行います。
治療のステップは3つのステージに分かれます。
第1ステージは、上の歯列と下の歯列が、前に出たり、後ろに下がったりしているのを一列に並ぶように修正します。
第2ステージは、下あごが後ろにずれているのを前に移動させます。
第3ステージは、上と下のあごの高さを揃えます(あごの傾きをなくします)。
A子ちゃんとお母さんには、以上のような治療ステージについて説明しました。
2人とも、よく理解してわかってくれたので、治療はとてもスムーズに進みました。A子ちゃんの治療は、1年かかりました。A子ちゃんの顔は、すっかり変わりました。

A子ちゃんの性格が変わった!

治療が終わったのは、高校3年生の新学期でした。
大学の志望校を決めなければいけない季節がやってきました。
A子ちゃんは、偏差値からするととても入れないと思われる、昔からの憧れの学校にどうしても行きたいと主張しました。自ら主張することは、今までのA子ちゃんには、決してなかったことでした。お母さんとお父さんは、自分の娘のこの変化に驚きました。
私は、A子ちゃんのお母さんから相談を受けました。私は、治療によって顔が変わり、性格が積極的になったことが、一番大事なことだと答えました。
これまでだったら、そのことすら誰にも言えないまま終わっていたのでしょう。お母さんは、A子ちゃんとじっくり話しあいました。そして、担任の先生や塾の先生の猛反対を押し切って、A子ちゃんが自分の夢に賭けることをサポートしたのです。

人生の「質」が変わった!

そして、春がやってきました。
A子ちゃんから葉書が届きました。第1志望の大学に見事に合格したというのです。
私は、A子ちゃんが希望の大学に入ったことよりも、別のことに注目しています。

それは、
1.自分を信じ、自分の夢をお母さんに話せるようになったこと
2.あれだけ、自分の娘を卑下していたお母さんが、担任や塾の先生より、自分の娘を信じるようになったこと
3.夢のために、最後まで諦めずに自分の意志を貫いたこと
A子ちゃんは、顔が変わったことで、劣等感から解放されて、性格が変わり、人生までも変わったと、自分でも胸を張っています。

上のあごが飛び出すと、いわゆる出っ歯になります。
しかしながら、上あごが飛び出しているだけでは、出っ歯はそれほど目立たないのです。
目立って見えるひとは、下あごが後ろに下がっている(後退している)場合です。

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